October 2009

Entries Title

第4巻 巻頭言

Date
2009-10-01 (Thu)
Category
ご挨拶
巻 頭 言

医療福祉経営マーケテイング研究会
理事長 馬場園 明

 本年8月30日に行われた衆議院選挙により、民主党が勝利を収め、政権交代が行われることになった。マニフェストのなかでは、後期高齢者医療制度の廃止が謳われており、元の老人保健制度に戻すことも検討しているようであるが、これに対しては自治体から反発されている。
 わが国の国民皆保険制度は、雇用主に被雇用者と被扶養者を被用者健康保険に加入させることを義務づけ、それ以外の人は国民健康保険に加入させて、それに公費を投入することで成り立たせているのが特徴である。高齢者医療の財源は、制度間で財源調整をする老人保健制度で対応してきたが、国民健康保険に高齢者が増加し、しかも保険料収入の伸びが望めないために、老人保健制度の維持が困難になったのである。そのことが、後期高齢者医療制度の導入された原因であった。各都道府県を単位として連合を作り、スケールメリットを利用し、リスクを分散する方法は理にかなったものである。また、この財源は、高齢者自身の保険料で1割、その他の医療保険者から4割、そして残りの5割を国や県・市町村からの「公費」として、負担が明確になっていることも意義があると思われる。
 保険の基本は自分の医療費のリスクにみあった保険料を払うことであるが、疾病や障害のリスクの高い高齢者は、その仕組みでは保険料は非常に高くなってしまう。現役世代から高齢者へといった所得再配分が保険料や税金を通じてなされる必要がある。それは、助け合いの制度化である。そうであるからこそ、医療費を誰がどのように負担していくかということや医療費が何にどれだけかかっているかということについては公表され、議論した上で、納得して使われていく必要がある。
 後期高齢者医療制度では、高齢者にマッチした医療を提供することも謳われているが、これも的を外れたものではない。福岡県の高齢者医療費が高い理由は、1973年の老人医療費無料化を契機に、また、炭鉱などが多かったという福岡県の事情も重なり、障害や病気の高齢者を医療機関でお世話をしていくといった習慣ができあがってきたことと関連している。しかしながら、高齢者の割合は急速に高くなってきており、医療の現場で高齢者をケアしていくことは経済的に困難になっている。一方、高齢者は病気になっても自宅で生活し、終末を迎えたいという希望があるが、それをかなえられない現実がある。高齢者が自宅や高齢者住宅で生活しながら、在宅医療や訪問看護を受けながら医療を受けることも保障するための創意工夫が求められている。
 高齢者は疾病に罹りやすいので医療のニーズが満たされることは必要であるが、高齢者自身も医療機関に任せきりにしないで、自分の健康に気をつけ、医療やケアを自分で選んでいくといった姿勢も求められる。また、高齢者も、自尊の要求が満たされ、周囲の人に貢献するための自己実現の欲求を満たされるニーズもある。そのような視点で高齢者対策を行えば、高齢者の生活も充実し、疾病や障害の予防にもつながるばかりか、助け合いを基盤にした健康な社会を作ることにもつながっていくと思われる。
私達の医療制度は満足のいくものではないかもしれないが、すべての人が満足する医療制度を作ることはできない。問題があるから壊すというのではなく、問題があるところは改善しながら、国民皆保険制度を守っていくという姿勢が求められていると考える。

第4巻第1号(2009年10月号)

Date
2009-10-01 (Thu)
Category
論文・機関誌

第4巻第1号(2009年10月号)が発行されました

PDFファイルにてお配りしております

医療福祉経営マーケティング研究 第4巻第1号 (2009年10月号)


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【目次】

巻頭言
医療福祉経営マーケティング研究会 理事長 馬場園明

原著論文
訪問看護ステーションの経営・管理改善モデルの構築とその評価 今岡節子、馬場園明 ・・・1
患者・医師コミュニケーション支援ツール「つたえるくん」の開発と評価 馬場園明、桑原一彰、荒木登茂子、萩原明人、山口裕幸、山口結花 ・・・13
医師と病気に関する患者のイメージを可視化する「サークルドローイング」の開発と実践
荒木登茂子、馬場園明、桑原一彰、萩原明人、山口裕幸、山口結花 ・・・25
「うつ傾向自己診断・対処提示システム」の開発と実践的活用 山口裕幸、山口結花、荒木登茂子、馬場園明、桑原一彰 ・・・33

ケーススタディ
高齢者医療ケアの未来 加治木しあわせの杜・高齢者健康コミュニティCCRC構想~医療法人 玉昌会 加治木温泉病院~ 山下正策、萩原隆二、梅本昭英、吉永浩之、上薗勝男、本田陽子、渡辺純子、山崎孝夫、杉村和隆、高田和美、手﨑清美、高田昌実、窪田昌行、馬場園明 ・・・41


定例研究会報告
第5回研究会報告 療養病床の転換をめぐる話題 窪田昌行 ・・・63
第6回研究会報告 高齢者福祉施設の経営分析 山田康子 ・・・64
第7回研究会報告 高齢者ケアにおける栄養支援 馬場園明 ・・・65
第8回研究会報告 介護保険事業の現状と問題点 窪田昌行 ・・・66
第9回研究会報告 社会経済システムとしての医療法人の役割と社会的責任 山﨑哲男 ・・・67
第10回研究会報告 福岡県の医療費と医療機関の今後の経営のあり方 馬場園明 ・・・68

事務局だより
医療福祉経営マーケティング研究会 事務局 ・・・69

研究会規約  医療福祉経営マーケティング研究会規約 ・・・70

投稿論文規定 投稿論文規定(和文・欧文) ・・・73

編集後記   医療福祉経営マーケティング研究会 編集委員 窪田昌行 ・・・74

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